第56次東北ボランティア 報告

 2015年9月20日(日),JR朝霧駅前に2台の車輌が並びます。

 シルバーウィークのせいか,3ヵ月前から申し込みが満席でした。2台で行ける人数は16人が限界です。大阪府立佐野高校の安里佳世子教諭から問い合わせがあり,募集を早々と打ち切らざるをえませんでした。
 リピーターたち,とりわけ4,5回の大学生たち西田怜奈さんたちも優先せざるをえません。本田寿久事務局長をはじめ,村上リーダー,3人の大学生,9人の高校生が宮城県石巻市渡波に向かいます。

2015年9月21日(月)

門脇小学校前で4年半前の現実に戻る

門脇小学校前で4年半前の現実に戻る

 農ボランティア班は神戸国際支縁機構が契約している脇前の田んぼの稲穂が実る前,イヌビエなど雑草刈りに従事します。

 沿道整備班は女川原発の仮設住宅に向かいます。初日は森花梨さんが班長です。

沿道整備a

沿道整備 左 森 花梨,中央 佐野高校安里佳世子先生,右 沈 裔愷(しぇん いーかい)

 傾聴ボランティア班は西田怜奈さんが高校生を連れて,渡波を戸別訪
問しました。家にあげていただき,震災時の体験を分かち合っていただ
きました。
 大崎市の渋井川氾濫の水害区域では,代表は25名を引率している東北
学院大学の災害ボランティアセンターの郭基煥副所長とばったり再会し
ました。

2015年9月22日(火)
 玉笑夫人がシチューを寛大に備えてくださり,私たちはおいしい味覚
堪能し,修空館を午前8時に出発。

修空館にて

 鬼怒川の水害地帯へ行く班と石巻市渡波における傾聴ボランティア班,沿道整備班は二手に分かれました。木村褜治氏のご厚情に感謝します。
 沿道整備班の西田怜奈さんによると,耐用年数が2,3年の仮設で復興住
宅にいつ入られるか見込みがないのです。仮設住宅住まいの斉藤さよ子
さんは私たちボランティアのために,いつも冷たい手製のゼリーを作っ
て,気遣ってくださいます。ボランティアは感激していました。
 本田寿久事務局長と村上リーダーの2名は鬼怒川水害ボランティア班
のお弁当をみやこさんから入手し,午後に合流します。

 鬼怒川の水害区域

20150921水害地帯

 日光で生まれ育った阿久津正幸氏から代表は前日も情報を入手しまし
た。阿久津氏とは8月21-24日のロンドンからの招待に同行した縁があ
ります。常総市ではなく,日光の上流地帯に行くことになりました。日
光市の社会福祉協議会のボランティアセンターの青木さん,岡田さん,
高橋さんは「遠路,よく来てくださいました」と丁重にあいさつをされ
ます。私たちが宮城県からやってきたと思っていたのが,神戸からだと
わかるとより一層驚いておられました。第50次に全体のリーダーを担っ
た森花梨さんは機構が派遣される場所,スコップ,腕章などを把握しま
す。本田博之君(第37次)も冷静沈着に高校生たちに指示を与えます。

20150921泥だし

廃棄物の輸送・保管・出荷用袋に最適なフレコンバッグ (Flexible Containers)につめ,一輪車で軽トラックの荷台に運び込む

ドロ出し開始 伊藤直樹氏宅床 森 花梨   
   ≪動画参照≫ドロ出しボランティア

 9月9日午後5時に,消防隊員が戸別訪問して大雨注意を伝えたそうで
す。しかし,気象庁などの天気予報を通じてたいした被害はないと知り
ます。伊藤直樹さん夫婦は安心して寝床に入り,寝入ります。ところが,深夜1時半ころ,なにか布団が冷たいのです。笑いながら,私たちにおっしゃるには,「おねしょでもしたのかな」と言われます。情けなく思うやいなやどんどん床上50センチまで水は押し寄せて来たそうです。暗くて様子がわからないまま,夫婦二人で椅子の上に乗っかり,夜明けを待ったということです。明け方,恐ろしいことに一階全体が水で襲われたことがわかりました。
 今回の気象庁の発表は台風18号を免れたという油断を与えました。伊
藤さんをはじめ多く人にまちがった慢心を抱かせてしまいました。被災
者が共通して応えます。
 茨城県常総市の鬼怒川で9月10日未明に堤防決壊が発生。1949年以来
の氾濫になりました。北接の栃木県も3日間の積算雨量が600mmを超え
ました。利根川水系鬼怒川は水害に備えて,河川の整備,多自然川づく
りにおいても重点的にされていた区域です。住民に安全という意識をも
たらしていました。
 ところが,蛇行して水田地帯に最適な自然環境であったにもかかわら
ず,行川(なめがわ)の氾濫で護岸の崩落や,床上浸水を被ります。栃
木県でも農作物被害19億3600万円,行川の決壊で護岸の崩落や,佐藤
悦史(よしふみ)さん(25)が排水溝に巻き込まれて死亡。栃木署によ
りますと,13日午前7時35分ごろ,栃木市藤岡町甲の田畑で水没して
いた軽自動車から同市藤岡町藤岡,小倉治さん(68)の遺体も見つかり
ました。冠水した場所で車が水につかり,車内に取り残されたとみられ
ます。大雨による栃木県内の死者は3人です。茨城県内を流れる鬼怒川
の堤防が決壊してから私たち第56次東北ボランティアが帰神した24日
で2週間となります。住宅地に流れ込んだ水は引いたものの仮設の堤防
工事がまだ完了していません。一番の被災地の常総市は今も1万2220
世帯,3万4173人に避難指示や避難勧告が出されています。常総市の床
上浸水は4841戸,床下浸水は7345戸です。常総市内避難場所17箇所
に200人近くが避難し,茨城全体33箇所 2200人に及びます。
 続く 未完

第56次東北ボランティア参加者報告

                    八鹿高校3年生 垣尾舟汰

 今回,東北ボランティアに参加すると決断したきっかけは両親(とく
に母)の勧めでした。我が家の両親は「時間があるときは,その時しか
できないことをする。高校3年生として,部活を引退したなら,ほんと
にすべきことは勉強の他に必ずあるばず。」という考えを強く持ってお
り,僕もその考えに強く賛同しています。いい大学に入ることは必ずし
も人生を豊かにするとは限らないが,こういった災害ボランティアや老
人ホームへの介護ボランティアなど,人の役に立ってみんなが通常この
時期に避けることを率先してやっておくことは,必ずこの先の人生を豊
かにしてくれる と僕の両親も僕も考えていて,今回参加させていただ
きました。

 今回の参加において,僕や両親がこだわったのは,独りで参加すると
いうことです。「自分で判断し自分でなんとかする」という力は,これ
から社会に出て行く私たち若い世代(特に最近の)に必要になってくる
力です。「他人指向型」の大衆社会になりつつある今,自分を持ち続け
ることができない人が非常に多いように思います。困ったら周りに助け
を求めることも大事ですが,これから先自分でなんとかしなければなら
ない状況がたくさんあるはずです。僕はそういう力をつけるという意味
でも今回の参加は非常によい経験になったと思います。

 前置きが長くなってしましました。すみません。

 実際参加した感想ですが,一番大きかったのは,同じ日本に住んでい
てここまで知らないことがあるのかということです。私たちは報道やメ
ディアから日々情報を得て過ごしていますが,やはり限界があるのだと
強く思いました。門脇小学校での衝撃。みたこともない小学校の状況に
思わず息をのみました。画面に囲まれて生活してる現代の若者に,画面
や写真からは伝わってこない何かが確実に伝わって来ました。それは僕
だけでなく,他に参加していた高校生のみんなも同じ感覚だったと思い
ます。また,私たちは人が何人死んで何人が避難しているという「数字」
にこだわりすぎているということに気づきました。人の命は1か0かなの
に,それらを累積し規模を推し量る。なんだかそんなことで「すごい大
変だ」とか「苦しいだろうな」とかいう感情が作られていた自分に腹が
立ちました。1人の人間が命を落としていること,その家族や親戚,関
係している人の,数字には表せない,悲しみ,苦しみ,悔しさ…。もし
かしたら言葉にも表せないのかもしれません。そういったことを抜きに
して「数字」という普遍的な概念的な事で感情が作られていることを私
たちは反省しなければならないと思いました。

 何が復興かということも考えさせられました。最初に行った門脇小学
校の前で岩村代表がおっしゃられたことが心から離れません。「震災か
ら4年半経ち,今日車でここまでくる時にみたのものは何ですか?イオ
ン,K’s電気,多彩な飲食チェーン店,我々が住んでいる街と変わらな
いものが新しく建ち並ぶようになりました。どうでしょう。今,東北地
方は復興していると思いますか?」おそらく,これから日本が「東日本
大地震」という歴史を背負っていくのと同じように,僕も代表の言葉を
忘れないでしょう。それほど心に響きました。

 2日目に向かった栃木県日光市鬼怒川上流では,被災された伊藤直樹
さん(80歳)の貴重なお話を聞くことができました。人間はやはり「油
断」が命取りになると。誰しも大丈夫だと思ってしまうのですね。自分
は大丈夫と思ってしまうことが一番危険だと思い知りました。本当はも
っともっと自分の身体を痛めつけてでも,被災された方の力になりたか
ったのですが,時間の関係上それが叶わず残念ではありました。順調に
作業が進み,少しでも早く被災された方が普段の生活に戻られることを
心から願っています。

 実際ボランティアという形で作業をしたりする時間は少なかったです
が,それ以上に現場に自分で行って,見て,感じで,心が動いたことに
とてつもない意味がありました。まさに「忘却にあらがうボランティア」
となりました。

 今回,神戸国際支縁機構様にご協力をいただき,このような貴重,か
つ素晴らしい経験をさせていただいたことに最大限の感謝の気持ちを表
したく思います。長い長い道のりを運転してくださった,本田事務局長,
および大学生の本田博之さん,スケジュールの管理他様々な場面でお世
話になった村上リーダー,たくさん声をかけていただいた,4,5回参加
されてきた大学生の西田怜奈さん,森 花梨さん。何より,こういった機
会を私たちのような者に与えるという活動を創始された,岩村義雄代表。
その他,お弁当や現地の活動に協力してくださった皆々様に心より感謝
したいと思います。この気持ちは僕自身が近い未来この神戸国際支縁機
構の活動に協力することで,恩返ししたいと思っています。是非それま
でこの素晴らしい活動を続けていただき,またもっともっと周りの人間
に認知され,大規模な活動になることを心より願っています。

 本当にありがとうございました。

 今回参加された皆さまのこれからのご健康と,また更なる東北地方の
復興進展を心より祈念して,神戸国際支縁機構第56次東北ボランティア
報告とさせていただきます。

KBHニューズレターNo.72(2015年10月10日付) 垣尾舟汰君報告a

鬼怒川水害

Follow me!