カン拾い禁止トラクト

 カン拾い禁止チラシa

 

カン拾い禁止は アカン!

神戸市市長 久元喜造 様

神戸市カン条例について                     

                              2014年7月3日
                             (社)神戸国際支縁機構 代表 岩村義雄

 10月1日に施行されるカン拾い禁止条例について善処を要請するように陳情します。
 カン[アルミ缶拾い]を仕事にして生活している「路上で生活をしている人」は,一日に約10キロを回収して,持って帰り,ぺしゃんこにつぶしてから,スクラップ屋に持っていき,相場により,約千円の報酬を得ます。分別ゴミステーションを回り,週に二回しか取り組めません。
 高齢であるにもかかわらず,ゴミステーションのビニール袋を開いて,きちんと結び直し,カンをつぶす際,音が出ないように住民に配慮しながら,遠慮気味に持ち帰るのです。
 週に得る報酬は約2千円で生計をたてます。
 近年,二トントラックで,ゴミステーションから袋ごと回収する大がかりなグループも登場しました。神戸市としては,アルミ缶だけの資源回収で年間2億5千万円(山崎伸之環境局資源循環部課長によると2億6千万円),スチール缶を含めると約3億円計上する大切な資金源だそうです。ゴミステーション荒らしは,深夜寝静まった時間帯にカンをつぶす騒音を立ててもおかまいなしです。「路上で生活をしている人」たちのマナーとは雲泥の差です。
 神戸市市役所の南側には東遊園地があります。阪神・淡路大震災のメモリアルの集いでも有名な市民のいこいの場です。そこには,生活保護を受ける資格を得られない「路上で生活をしている人」が約10人,居住しています。最古参は阪神・淡路大震災からですから20年目を迎えようとしています。

 昼間は公園,夜は地下道で暮らしています。
 他者に対するおもいやりのあるやさしい人たちです。能率,効率を追い求める企業戦士とは異なり,仲間が困っていると互いに気づかうのです。うそをついて人をおとしめることができない人たちです。
 5月20日に,中田さん(仮名),本田さん(仮名)と西区友清の畑に行きました。将来,自産自消 「自分で作って,自分で食べる(消費する)」で野菜などを栽培する目的です。
 福祉の視点からも,彼らが自分たちの食を自らまかなうことができるように,耕作をするのです。日照り,害虫でぜんぜん収穫ができない事態も考えておく必要があります。ともあれ就農に取り組みだしています。 ところが,神戸市は「路上で生活をしている人」たちの住居,生活,人権を考慮するどころか,排除しようとします。市役所の業務課は路上生活者を見つけては,2014年10月1日以降,カン拾いをしたら,罰金20万円以下を課すというチラシを配っています。
 カンを職業としている人たちにとって,収入源が断たれようとしています。排除の施策によって,平穏に暮らしている人たちの生活,いのち,仕事の権利が踏みにじられようとしています。

 東北で起きた東日本大震災から4年,阪神・淡路大震災から20年目をむかえようとしています。関西では,東北の復旧,復興,再建がすでに成就したと忘れられています。しかし,宮城県石巻市では復興住宅が間に合わず,仮設の住民たちの忍耐も限界に達しています。住む賃貸住宅にしても作業する労働者がいないのです。東京オリンピック関係の影響で東北は見捨てられています。
 オリンピックが終われば,一時的な工事作業の労働者は使い捨てカイロのように,仕事もなく,大阪の釜ヶ崎のように吹きだまりに押し込められることになるでしょう。「路上で生活をしている人」で街は格差社会の二極化が一層顕著になります。

 したがって,排除ではなく,共生していこうというエトスが必要です。弱者に対する思いやり,福祉が行き届いたコミュニティ,孤独死,孤立死,独居死が横行しない社会をつくらねばなりません。東遊園地の「路上で生活をしている人」たちが傷めば,みんなが傷む血の通った有機体の地域,国づくりに政・官・財・学,メディアは敏感であってほしいと願います。
 2014年4月から,炊き出しに集まる日雇い労働者たちの不安,恐れ,願いを聞くにつれ,事態が深刻であることが伝わります。野宿者の生活環境が条約施行により,精神的にも人権が軽んじられています。福祉の前に,抑圧の論理が先行しています。行政の方は,路上生活者の個々に「カン拾いをすると,10月1日以降,罰金だ」と,チラシやトラクトを配って徹底しようとしています。
 心ない中高生たちが路上生活者を襲撃するお墨付きを与えることになりかねません。
 したがって,10月1日のカン条例の廃案を要望します。
                                           以上

水色

20140704耕支縁友清カン拾い

「中外日報」(第一面から抜粋 杲恵順記者 2014年7月4日付)

20140714路上生活者神戸夕刊

神戸新聞(黒田勝俊記者 2014年7月23日付)

 カン拾い禁止について,ツイッターの反応がすごい。神戸新聞の黒田勝俊記者の記事を掲載したところ,日本中からの反響がある。

水色


新市長に嘆願

20140723久元喜造市長

神戸新聞 (2014年7月23日付)

 2014年7月23日,第41次東北ボランティア石巻訪問から帰宅すると,家内が上記の久元喜造神戸市長の弁明記事が出ている切り抜きを見せてくれた。

岩村カヨ子 河合和子さん撮影 2012年4月16日 Kayoko Iwamura

 がくぜんとした。兵庫県出身であり,若く行動力もあり,期待していたが,現場を知らなすぎる。情報を的確に把握するブレーンがいないことがアキレス腱であろう。

 生活保護受給者といっしょにするな

 路上生活者と月に12万円の生活保護を受給される生活保護受給者とは異なる。どちらもカン拾いをするが,後者は住居があり,生活費も支給され,その上,カン拾い労働から収入を得ている。神戸市には約140人の日雇い労働者が炊き出しに並ぶ。しかし,生活保護受給者がほとんどである。ある者は家から電車に乗って,炊き出しに並ぶ。
 一方,「路上で生活をしている人」は住宅もなければ,炊き出しにも並ばない人もいる。カン拾いによって生きながらえている。
 神戸国際支縁機構は耕支縁の働きで,神戸市東遊園地で「路上で生活をしている人」と食事をするし,畑の栽培にも共に行動する。生活保護受給者は現在のところ,一緒ではない。もちろん分け隔てするつもりはないが,集まってこられるのは路上生活者だけである。

ゴミステーションから大量に持ち出すのはだれだ

 カン拾いについて,ゴミ回収より前に,2トンの軽トラックで回収する業者が神戸に徘徊すると聞くが,見たことはない。ベトナムや中国人だといううわさ(カン拾いをしない路上生活者高橋さん[仮名])である。機構の働きのひとつである難民支援でベトナム人が多い長田区で聴聞するが特定できない。つまり,実際は外国人が深夜でも騒音をたてて,持ち去るのだというまことしやかな情報はあてにならない。行政が良く知っている関係者なのではないか,と勘ぐってしまう路上生活者本田さん(仮名)もいる。
 いずれにしても,神戸市全体のカン処理収入が3億円という数字は低すぎる。実際に資源ゴミの収入が正しく計上され,神戸空港,STAP細胞などの先進医療,地下鉄の赤字の補填として相殺されているのかどうか実態が明らかになることを神戸市民として期待する。ゴミ分別のそれぞれの袋代を個人負担して協力しているのである。

絶対的な貧困の格差社会のセーフティ
ネットの未熟さ

カン拾いイラスト

 生活保護法第30条「生活扶助は,被保護者の居宅で行うものとする」に従い,路上生活者も生活保護受給すればいいという意見は上からの目線である。「居宅」をあてがい,生活費(家賃を含め月12万円)を支給するように保護制度で網羅できると行政は考える。
 しかし,生活保護が適用されると,勤労のため仕事に従事するわけだが,高齢,能率を優先する新自由主義経済の企業では継続できない人たちである。やおらカン拾いに戻る。かつ,定期的な収入を得ながら,無料の炊き出しにも並ぶ。福祉,居宅紹介,ハローワークへの引率,風呂などは私たち民間(生健会[生活と健康を守る会],神戸の冬を支える会,解同[部落解放同盟]など)に全部丸投げしている。中には,生活保護と,住居を斡旋するという甘言で路上生活者を騙して,粗末な小屋に無理やり住まわせ,生活保護費をかすめる悪徳なグループも横行している。ところが,神戸市は「巡回」と称して,規制だけは循環指導員に給与を払ってでも迅速に行う。カン拾い禁止のチラシ配りはさすが,私たちには任せなかった。
 落とし穴のある福祉の甘いささやき,悪辣な業者のルールやに乗っかりたくないのが「路上で生活をしている人」である。騙されない知恵がある。

 保護給付もない路上生活者に「健康で文化的な最低限度の生活」の保障が必要なことは憲法25条にも書かれている。憲法99条には,「公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と記載されている。もっとも神戸市は憲法9条擁護の集会の後援を2013年までしてきたが,今年は後援できないと断った。政治的な集会だからという口実だが,その判断は人間がしたものなのでは。日本はいつ法治国家から人治国家になったのだろうか。神戸市行政は憲法など考慮したくないという高圧的な行政に舵を切り替えたと揶揄されても反論しようがない。
 消費税はあがり,老後生活に困窮している路上生活者の労働をも奪う神戸市のカン拾い禁止条例は一刻も早く廃案にしていただきたい。


生活困窮者自立支援制度も紙くず政策である

 2015年4月以降,生活困窮者自立支援制度が実施される。神戸市の各区にある福祉事務所は日常業務以外に,生活保護受給者の不正受給について,私たち民間からの寛大な対応依頼などの交渉に疲弊している。余力はない。事務所は受給希望者からの申請書類の提出を催促するだけに終わろう。一部の障害者就学雇用申請のように路上生活者に適用できる人材,きめ細かいサービス,財力はないからである。口頭申請を認めるなどと玉虫色の発想自体が上からの目線でしかない。結局,かけ声で終わる。
 厚生労働省の官僚は今まで以上の複雑な申請手続きのマニュアル化について,打ち出す。しかし,新しい企画達成感の自己満足を得る機会にしかすぎない。
 つまり,路上生活者にはなんの影響もないのに,国会審議,報道の見出し,役所内での評価のために莫大な予算をかける。そんな役人の名誉欲のために税金を使うなら,路上生活者の路上の「居宅の保障」,カン拾いなどの「労働の権利」,生活保護水準を下回らないように最低賃金を下げる愚策からの脱却の施策を即刻,話し合ってもらいたい。


落ち穂拾いをしていたキリストの先祖

 カン,ペットボトル,新聞紙,ダンボール,廃棄された故人所有物など換金できる資源を「路上で生活をしている人」に残しておく配慮がほしい。

ミレーの落ち穂拾い

 「畑から穀物を刈り取るときは,その畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。貧しい者[アニー アニー]寄留者 [ゲル ゲール]のために残しておきなさい。わたしはあなたたちの神,主である」(レビ記 23:22)。
 聖書に書かれているアニー「貧しい者」とは路上生活者,生活保護受給者であろう。ゲール「寄留者」とは,難民申請している移住労働者,帰国した中国残留邦人,戦前,戦時下に強制連行されてきた在日朝鮮人たちアジア人。神戸市垂水区にも資源ゴミで生活を余儀なくされている人たちがいる。
 イエス・キリストは,イスラエル人ではない寄留外国人であり,落ち穂拾いをしていた寄留者ルツの子孫である。
(拙論『マナ』誌 2013年10月号「ルツの落ち穂拾い」)。
 福祉が行き届いた国づくりに,真摯な行政の行動力を期待する。このままではいつまでたっても,溺れている弱者は排除され,人権を認められない。国の指導者は,麻姑掻痒の精神で実現されたし。

ラジオ関西 2014年8月1日(金)午後4時半
 出演  (社)神戸国際支縁機構 代表 岩村義雄
    神戸市市政担当記者 西口正史
    神戸市環境局資源循環部適性排出担当課課長 山崎伸之。

「資源ごみ持ち去り禁止条例=カン条例」2014年10月,神戸市で施行
~是か?非か? 細々と空き缶を集めて生活する路上生活者から悲鳴も~

(続く 岩村義雄)