季刊誌『支縁』  巻頭言

https://kisokobe.sub.jp/article/3254/     座視してられない健忘症

 目に入らない被災地の悲しみ,怒り,くやしさ

 季刊誌『支縁』No.1を2012年11月3日に創刊
⇒ 連載 「田・山・湾の復活」 

 被災地へ赴いて,地べたを這うような活動を3.11直後から取り組ん
できました。毎月,片道約1,100キロの運転です。すでに地球を一周以上しています。有能なドライバーであられる栫和彦さん(元自衛隊勤務)が積極的に参加者を運んでくださいます。震災直後からの参加者たちも予定スケジュールをこなすのが精一杯でした。定例講座である「Let’s 農(know) 林漁」が参加者の提唱ではじまったり,神戸市西区友清で無農薬,有機栽培の「耕支縁」,東遊園地(神戸市役所隣)の炊き出しのきっかけとなりました。生まれてはじめての第一次産業,農林漁に圧倒されることばかりでした。今でもがれき撤去などの活動も含まれます。
時間は止まっています。
多くのメディア報道には,物足りなさや違和感を感じます。3.11を
忘れることなど東北のだれもできません。しかし,報道にも旬ではないのでしょうか,暗い情報だからでしょうか。被災地の惨状や怒り,悲しみ,くやしさをとりあげなくなってしまいました。
東北三県の記事と言えば,威勢のよい大型プロジェクト,復興した一部の部分しか扱われていません。おそらく5年,10年経ても,更地,倒ていない状態が楽観的に報道されている現実の厳しさが無視されています。壊した家屋,過疎,高齢化,少子化に追い打ちをかけ,産業は復興していません。

 「しーっ,余震だ。何億もの馬が怒りながら,地の下を駆け抜けて
いく
」(「詩の磔(つぶて)」和合亮一 2011年3月20日)。

 「詩よ。お前をつむごうとすると余震の気配がする。お前は地を揺
すぶる悪魔と,もしかすると約束を交わしているのか。激しく憤り,
口から涎(よだれ)を垂れ流し,すこぶる恐ろしい形相で睨んでいる
のだな,原稿用紙の上に首を出し,舌なめずりする悪魔め

(〃 3月23日)。

 今までの,小さな働きを支えてくださった皆さまに報告することを願いつつも機関紙が遅延してきましたことをお詫びいたします。

 東北との「縁」から「結」(ゆい)は,5年,10年では終わりません。これからも長い期間になるだろうと思われます。
皆さまと共に手をたずさえて,命のつながりを大切にしていきますの
で,ご意見,感想などを事務局へお寄せください。

 2013年春,石巻市では5校で閉校式が行われました。3月2日には牡鹿
半島の船越小学校が閉校になり,雄勝小学校と統合されます。同小学校に勤務していた教職員たちが費用を出し合い,「希望の灯」(冊子 A4版
126ページ 坂本忠厚前石巻市教育委員会社会教育主事たち)を1000部発
刊。102~105ページに神戸国際支縁機構による船越小学校,名振コミュニティセンターでの2011年7月8日のヒアリングが全文掲載されています。
⇒ 牡鹿半島 聞き取り調査 (2)  船越小学校
⇒ 牡鹿半島 聞き取り調査 (3)  名振         

     

 発行にあたり,印刷費,発送費などにご協力いただいています企業,各種団体に感謝申しあげます。

季刊誌「支縁」No.1 〈2012年11月3日付)
巻頭言  理事 水垣 渉(わたる 京都大学名誉教授)

      

 「しえん」という言葉は,聞いたときは分かりませんでしたが,
「支縁」という字面から真っ先に連想したのは「縁の下」という言
葉でした。
「縁の下の力持ち」の「縁の下」です。表にあらわれないところで
人のために力を尽くすこと,という意味の成句です。昔の日本家屋
は,縁の下をのぞき込むと、家をしっかり支えている太い柱が見え
ました。こういう柱の一本になって,人々の結び付きを下からいつ
までもじっと支えていこうというのが,神戸国際支縁機構の名前の
意味でしょう。たいそうな堅い名称という第一印象とは違って,本
当は素足で土を踏むような泥臭い名前です。私はこの名前が好きで
す。

No.2 (2013年2月3日付)
巻頭言 「価値ある美しい木」  理事 新免 貢(みつぐ
宮城学院女子大学教授)

       

 知り合いの被災者から年賀状が届きました。「お変わりございませ
んか。当方は貧困フリーター,Wワーク,夜勤シフトに追いまくられ
ています。東京での避難生活は心身共に疲弊しました」。
「アベノミクス」は被災者には実感しにくいのです。震災が金儲け
の機会として利用されつつあります。お金がすべてに抗う仕方で,神
戸国際支縁の働きは,人が人として人を支えることを貫きます。まる
で,激流のそばで,流されそうで流されないしなやかな木に似ていま
す。大木ではありませんが,弱さを「いのち」として立ち続ける木は,
樹齢千年超えの天然記念物よりも価値があり,美しいのです。

No.3 (2013年5月3日付)
巻頭言 「支縁」について 理事 白方誠彌(せいや
淀川キリスト教病院名誉院長 )

       

 新約聖書のヨハネによる福音書 13章34節に,「あなたがたに新し
い掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛した
ように,あなたがたも互いに愛し合いなさい。」とのイエスの教えが
あります。これは人類の終局の目標であり,マザーテレサは,その生
涯を通して実践された方でした。神戸国際支縁機構の東北へのボラン
ティア活動は,このイエスの教えを着実に実践されていると敬意を表
します。この体験を通して,それぞれの方々にとって,人生を歩む上
で特別なお恵みがあると確信すると同時に,神様の祝福を祈りたいと
思います。

No.4 (2013年8月10日付)
巻頭言 「支縁」の輪      理事  島薗 進
(東京大学名誉教授)

       

 猛暑の中、被災者の苦難が続いている。「復興」の波にのった方も
おられるだろうが、取り残されるように感じている方々も多い。とり
わけ福島原発被災地ではそうだ。東北の地は遠く感じる方が多い。行
くのに費用もかかる。それだけに支援者の来訪が待たれている。神戸
では阪神・淡路大震災の記憶が生きている。その神戸からこその、宗
教・宗派を超えた協力による持続的な支援活動は、東日本大震災の被
災地の方々への力強い励ましになっていると信じる。そしてその活動
は全国各地の支援者の活動と響き合って、「支縁」の輪を広げている。
東京の私たちもその恩恵に浴している。

No.5 (2013年11月16日付)
巻頭言 「ありがとう!」     石巻支所長  阿部捷一

      阿部捷一語り部 サンテレビで放映

 「阪神淡路大震災の時の恩返しに来ました。」と軍手と長靴で,瓦
礫の山に立ち向かう神戸の青年たち,いったいこの人たちは,何者な
のだろうと驚きばかりでした。自分で旅費や食事代を負担して,千キ
ロもの道のりを東北の被災地までやって来るのです。
考えてみれば,阪神淡路の震災を経験していない世代です。家族か
ら聞かされていたのでしょうか。困っている人たちの,心の支えにな
りたいと行動する勇気と目の輝きに心を打たれました。お金では買え
ない,尊い絆を被災地に生み出したのです。神戸国際支縁機構の若者
たち,導いてくれた代表の岩村先生に,心から,感謝いたします。

 20131105収穫祭阿部捷一氏

 No.6 (2014年2月15日付)
巻頭言       吉野 雄一
渡波地区振興協議会会長

      吉野雄一

 本年3月,大震災三周年が来ます。その間,特に町の復興について,
役所の方々等真剣に取り組んでいただきました。その他町の人々の体
のケア,そして心の復興面で一ヶ月に一回来て,奉仕活動してくれて
おられる機構,神戸の岩村先生他大学生さんは心ある奉仕団体です。
一年目は情報がわからず,二年目に丹野清市議より,神戸のグルー
プを紹介されて,私たちの会の行事などに仕えてくださっています。
神戸国際支縁機構のみなさんの共に生きる精神については町民より感
謝されています。私どもも神戸の方々と縁を深めてつながっています。

No.7 (2014年5月15日付)
巻頭言    小野寺脩
NPO「日本教育空手協会」理事長  機構の宿舎修空館館長

       修空館館長体操

第19次 第一回目「田・山・湾の復活」収穫祭にて
10歳若返る体操指導 (渡波公民館 2012年11月20日)

 神戸の人たちは,19年前の阪神淡路大震災で『東北人に助けても
らった!』ボランティアに来てくれます。毎月,定期のこの活動によ
り,今後(もしも)20年,30年先に日本のどこかで何かあっても,
今度は東北人が力を発揮します。北から南まで,同一民族の日本は,
知らない人でも助け合うことのできる素晴らしい国だと,地域の子供
たちもいつか誇りに思うことでしょう。
日本地図を人体に置き換えると東北は心臓部,大事なところの回復
で全国の人の生きる力に繋がります。ボランティアの尊い姿に心より
感謝いたします。

No.8 (2014年5月15日付)
巻頭言   勝村弘也(神戸松蔭女子学院大学教授)

 古代エジプトの格言に「怠慢な者には,昨日がない」とある。ここ
で言う「昨日」とは「過去」の意味である。ロバに載せた商品を不正
なやり方で奪われたある男が,事件への適切な処理を求めて役人に訴
えるのだが,役人は何もしてくれないという文脈にこの格言が出てく
る。過去の重大事件に対する役人の不作為を非難しているのである。
東北の大地震・大津波から三年数か月を経過した。この間に行政が何
もしなかったとは言えないだろうが,「昨日」のことを忘れたがって
いる役人や政家がいるのは,昔も今も同じである。腹が立つ!

No.9 (2014年11月15日)
毎月ありがとう。 木村褜治 石巻市沢田区長

 若い人見たことねぇーちゃー。笑顔で炎天下ちゃ,寒い時ちゃー,
黙々と土をいじる姿は長いこと見ないっちゃー。年よりだけになって
しまった村に来てくれるのはありがてぇなあ。毎月来てくんだなぁ。
仮設住宅には辛い経験をした人が少しでも明るくなればと沿道に花を
植え始めた。だんだん手に負えなくなったべちゃ。「私たちにも手伝
わせてください」とうれしかったちゃ。孫にもじいちゃんばあちゃん
の花と誇りに思える郷土を残してびちゃなあー。仮設の人たちも楽し
みにしてるっちゃ。東北を忘れねぇでる神戸の人々に手を合わせて待
ってるからちゃ。

      20140627シバザクラ植樹

No.10 (2015年2月21日)
佐藤金一郎 渡波3丁目自主防災部長

  震災の記憶 渡波3丁目の自主防災部長 佐藤金一郎

 2011年3月11日(金)14時46分横揺れ一分,縦揺れ一分,横揺れ
一分の地震これは宮城県沖地震と確信,事前学習により津波の襲来を
認識,避難勧告の巡回に走る。
翌日,地域の視察では,被害が甚大であり惨憺たる現状であった。
その被災住宅の残骸を乗り越えて救済活動を行う事でした。
神戸国際支縁機構の代表と被災視察し,その時に話したこと,「前
日,松の木の天辺で鴉がカーと泣いて居ました。翌日は松の上でカー
(車)が打ち上げられて居ました」と。

        20120830まけないぞう

No.11(2015年7月23日) 村社会はどうなる
石巻市渡波地域農業復興組合代表 阿部 勝

 ほとんどの親の姿は「おまえは農業やめろ。いい会社さ入ってい
い就職しろよ」って,ほとんどの人たちがその方向なんだね。
そんでここの農地潰れるっつうことは多分容易いと思うでがんす。
というのは耕したくねえ人たちがほとんどなんだから。まず耕した
くない。そして「売ってお金にしたい。後は勤め人だ」っつう人た
ちが。割り切ってんだね。だからそのような状況の中で20年後のム
ラ社会はどうなるかって,岩村先生からもちくちく,私も痛いとこ
ろ突かれるような感じもすんだね。 村社会っつうことについて,そ
んで村社会はどうなるんだっつうことを言われっともう,人たちの
頭にはこれからの村社会も何もないんだね。
「神戸からの若い人たちが来てくれて助かってるべ」と養蚕やっ
てる人が今はいないから。
(2013年9月29日ひょうご“ワイワイ”放映)

阿部勝

No.12 (2015年11月1日)
石巻森林組合鈴木健一前代表理事組合長

 私たち石巻森林組合に2011年の東日本大震災から数ヶ月経ったあ
る日,あの阪神・淡路大震災の時,まだ生まれていなかった,幼かっ
た高校生,大学生たちの訪問を受けました。「私たちにも何かをさせ
てください」と語る神戸国際支縁機構の若いボランティアの瞳は美し
く輝いていました。思えば,渡波での収穫祭,餅つき大会などで日本
の将来を担う若い人たちと一緒に海の幸,山の幸をいただいたこと,
またわが家の納屋にある昔の足踏み脱穀機を使う昔ながらの農作業に
いどんだみなさんとの出合いも懐かしい思い出になりました。神戸に
戻った人たちが兵庫県の森林,山,木々と親しく取り組まれることに
いささかでもお役に立てたとすれば,私にとって望外の幸せであり,
感謝です。

「牡鹿新聞」(2013年11月8日付)

「牡鹿新聞」(2013年11月8日付)

No.13 (2015年11月3日)
斎藤ギルバート&志磨

 神戸の方々と石巻で出会って1年以上になります。岩村先生は英
語が達者です。フレンドリーなのですぐに石巻在住のフィリピン人
たちと仲良くなります。岩村先生が英語で話しかけ,フィリッピン
の人が日本語で返答している場面をなんども見かけました。思わず
笑いをこらえました。去年までクリスマスはフィリピンの人たちで
集まるという機会はありませんでした。それぞれが教会にお祈りに
行った際,顔を合わせていただけでした。神戸国際支縁機構と交流
も兼ねてクリスマス会を昨年開きました。一緒にフィリッピンダン
スをしたり,お料理を食べたりと素晴らしい1日を一緒に過ごせて
みんな幸せでした。今年も田植え,稲刈りや脱穀を体験させてた
だいたり、11月23日には交流会、そして12月にはクリスマス会が
楽しみです。神戸の方たちともっと仲良くなれたらいいなと思いま
す。石巻在住の中国人,ベトナム人,アメリカ人の生活を気にかけ
てくれる岩村先生に本当感謝しています。

No.14 (2016年2月10日)第一面

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